膝の痛み

膝の痛みは、外来患者の訴えのなかでは、腰痛の次に多いものです。
その大半は、加齢に伴う変形性膝関節症です。
「あなたは、年だからしかたがない。」
「太っているから、仕方がない。やせなさい。」
「運動不足だから、どんどん歩きなさい」
との言葉を医者に言われて、落ち込まれる患者さんが、多く来院されます。たしかに、老化や体重増加や筋力の低下が主な原因であることは間違いありません。他に考えられるのは若いころの外傷(けが)も考えられます。原因は一つではありませんが、老化に関しては、同年齢でも全く痛みのない人は沢山おられます。また、白髪や皺と違って、目に見えないため、いきなり変形の進んだレントゲンをみせられるとドキッとされます。体重の増加や筋力低下も、痛みのために運動ができずに、陥る悪循環であるように思われます。そこで、まず痛みをとるために行われる治療も含めてお話させていただきます。大きく分けて、以下の4つの方法です。

  1. 日常生活の注意と痛みを伴わない運動療法の指導
  2. ホットパック、低周波などの消炎鎮痛療法、痛み止めやシップなどの投薬、膝関節内への注射
  3. 膝を安定させるためのサポーターや足の下の中敷(足底板)などの装具療法
  4. 以上のような、治療の効果がない場合では、関節鏡、骨きり術、人工関節置換術などの手術

以上に関してよりよく説明する代わりに、現場での患者さんからよくある質問に答えます。

膝の痛みについて

  • 運動不足だから、よく歩くほうがいいのか?
  • 体全身の健康のためには、歩行はいいことだと思います。しかし、痛い膝にとっては、かえって悪い結果にたつながります。膝に負担をかけない運動をこころがけましょう。(水中歩行、チューブトレーニング)
  • 膝は冷やすほうがいいのか、温めるほうがいいのですか?
  • このことは。患者さんが実感されておられることが正しいのです。入浴や保温サポーターにより膝を温めた方が痛みが和らぐのではないでしょうか。しかし、運動しすぎたり歩きすぎたりして熱感がある場合は、冷やしてください。
  • 温めなさいと、医者にいわれたのに、どうして冷たいシップが処方されるのか?
  • 基本的には冷シップや温シップには、患者さんが考えるほど、局所の温度を変化させません。冷シップの水分が冷感を、温シップの唐辛子成分が温感を感じさせるのです。さらに薄い茶色のシップもあります。基本的には、どれも経皮的消炎鎮痛剤が皮膚からしみこんで効果を発揮します。
  • 前の病院では、診察のたびに水を抜かれましたが、水があるから痛むのですか?
  • 膝に炎症がおこり、軟骨が磨耗するために水がたまる原因になります。すなわち、水は痛みの原因ではなく結果なのです。まれに、大量に水がたまることが、圧迫感を伴う痛みの原因になります。その際には、水を抜きます。しかし、完全に炎症が治まっていないために、再び水がたまります。このために、水を抜くことが癖になって水がたまるとの誤解をうむことがありますが、そうではありません。水は、適切な治療により自然になくなります。
  • 痛み止めは一時的で癖になり、やがて効かなくなるのでは?
  • 飲み薬の痛み止めは、シップと同様に、消炎鎮痛剤です、炎症の繰り返しは痛みを増幅し、局所の状態にも好ましくありません。炎症を鎮める手段として、痛み止めを飲むことは意義があります。やがて、効かなくなるのではなく、それは炎症が悪化していると考えます。しかし、胃腸障害の副作用に関しては、十分に注意する必要があります。
  • 膝の注射は効くのですか?
  • 注射に関しては、現在は主に2種類あります。一つは軟骨の保護剤のヒアルロン酸で、もう一つは炎症を抑えるステロイドホルモン剤です。基本的には、ヒアルロン酸でも十分に痛みは軽減します。ヒアルロン酸は軟骨を再生する効果ではなく、軟骨の磨耗を少なくし、痛みも十分にやわらげるのです。時に、炎症が非常に強い場合は一時的にステロイドも使用します。関節内にステロイドを注射することが、骨をぼろぼろにするとの誤解があります。全身の投与ではありませんので、そのようなデータは現在ありません。
  • 膝の内側が、痛いのにどうして膝の外側から注射するのですか?
  • 変形性膝関節症の痛みの場所は、ほとんどの人が内側です。日本人に横脚の人が多いのは、内側の軟骨がすりへってしまうからです。しかし、関節は一つの袋であり、内側が痛い人も、外側が痛い人も、膝蓋骨(お皿)の下が痛い人も外側から注射するのです。注射した液は関節全体にいきわたります。
  • 健康食品で、軟骨が再生し痛みがやわらぐのか?
  • 膝の痛みのための健康食品が世間に多数あります。欧米では効果があるとの報告もあります。このことに関しては、食べたヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等の軟骨成分がどのよう経路で軟骨にたどりつくのか?あるいは、全く別の原因で効果を発揮するのか等の研究成果がまたれます。結論は、効果のある人はおられると思います。しかし、病状のある時期(初期なのか?)に効果があるのではないかと推測しております。しかし、糖尿病などがある人は主治医と相談して服用してください。
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