手術について
人工関節置換術
中高齢者では膝や股関節の痛みのために日常生活に支障をきたす疾患として変形性膝関節症や変形性股関節症があります。これらは関節の軟骨が徐々に消耗し疼痛が増強します。
治療として、まず消炎鎮痛剤の内服や注射、筋力訓練などのリハビリを行います。それでも改善がない場合には人工関節手術を行うことで痛み無く歩くことが可能になります。
また関節リウマチも同様に関節変形が進んだ場合にも人工関節手術の適応です。
TKA UKA
関節には骨の表面に軟骨(関節軟骨)があり、この軟骨は関節を滑らかに動かす働きがあります。この軟骨が擦り減ることで骨の表面が露出し骨と骨がゴリゴリと擦れ痛みが生じます。

TKA術後

TKA術前
いったん擦り減った軟骨は再生しません。そのため軟骨部分を金属性の人工関節に替える全人工関節置換術(TKA)を行います。

UKA術後
膝関節の一部の軟骨のみが損傷している場合にはその部分のみを小さな人工関節に置き換える片側型人工関節(UKA)も行っています。
人工関節は経年的にゆるみが生じる可能性があるため耐用年数を考慮する必要があります。個人の年齢や活動量により耐用年数が異なってきますが大部分の15~20年はゆるまない、と考えています。人工関節がゆるむと疼痛が生じるため再手術が可能となります。
人工関節でできること
通常の歩行(慣れれば杖が要らなくなります)、Walkingやサイクリング、ゴルフ、水泳、などの膝に大きな負荷のかからない運動
人工関節でできない、すすめられないこと
正座や深いしゃがみ込み動作(蹲踞)など最大限の可動域を必要とする姿勢、エアロビクス、Jogging、など関節に大きな負荷がかかる運動(ゆるみが生じ易くなります)
前十字靭帯損傷
入院について
トイレシャワー・Wifi・TV付の個室で3泊4日、入院した当日に手術を行います(遠方の方は前日入院も可能)。
手術について
全身麻酔で、手術時間は約1時間、術衣に着替えますが、下着は着用したままで、尿道カテーテルは行いません。
リハビリについて
術後3時間すると歩行器を使ってベッドから離床します。術当日から理学療法士がついてリハビリがはじまり、4日目に松葉杖歩行で退院します。
外来では週1~2回のペースでプロトコルに沿って進めていきます。2~3週間の松葉杖歩行のあと、1か月で日常生活が楽になります。2~3か月でジョギングなど部分練習をはじめ、6か月での復帰を目標にトレーニングを進めていきます。すべての復帰基準をクリアすれば完全復帰です。
原則的に装具は使用しませんが、希望時や競技によっては様々なタイプの装具を相談しながら対応します。
遠方の方は当院のプロトコルを参考に近くで行ってもらうよう紹介し定期診察をします。
手術方法について
5mm程の穴が2個、2~3cm程のキズが1個で、すべて内視鏡で手術します。膝の後ろにあるハムストリング腱や前にある膝蓋腱を用いて十字靭帯を再建しますが、選手の身体的特徴や競技に応じて手術方法を決定します。再建靭帯はスクリューなどで固定しますが、希望されない限り抜去の手術はありません。
「小侵襲の膝蓋腱によるACL再建術」
膝の前の膝蓋腱(BTB)で再建する場合、当院の特徴は、靭帯を2㎝程の小切開で再建するため痛みが少ないことです。一般的なBTB法よりキズが小さいのがわかります。
合併損傷について
半月板損傷、側副靭帯損傷、後十字靭帯損傷などの合併損傷や、両膝前十字靭帯損傷に対して同時手術も行っています。再受傷による再再建術も対応しています。
保存療法について
前十字靭帯損傷は残念ながら手術になることが多いのですが、最終学年で引退が近い場合、重要な試合が間近にある場合などは、起こりうるリスクとパフォーマンスの低下を説明し十分に相談した上で、当院の保存療法プログラムに沿ってスポーツ復帰し、慎重に経過をみていきます。
手術の予約について
すでに診断をされていてなるべく早く手術を希望される場合は、外来診察の予約時に、MRI持参の有無、手術希望の有無をお伝えください。必要となる術前の血液検査やリハビリ評価もなるべく早く対応してご負担のかからないようにします。
手術成績について
2016年から2021年のスポーツ復帰時期は、ほとんどが6~8ヶ月で、平均7.4ヶ月でした。
2013年から2021年の再断裂率は、同側は4.4%、反対側は3.9%でした。
再手術までの日数は平均21.1±16.6ヶ月でした。
膝半月板損傷
入院について
①部分切除なら日帰りで、②縫合なら2泊3日の個室入院になります。術中判断になる場合は入院の予定をして手術を行います。
手術について
全身麻酔で、①部分切除なら15分程の手術で、術後2時間経過して麻酔からしっかり覚せいし、歩行が安定していることを確認して帰宅となります。②縫合なら1時間程の手術で、術後3時間すると歩行器を使ってベッドから離床し、翌日から松葉杖歩行で3日目に退院します。術衣に着替えますが、下着は着用したままで、尿道カテーテルは行いません。
リハビリについて
手術の内容に応じて、週1~2回のペースでプロトコルに沿って進めていきます。①部分切除なら必要な範囲で松葉杖を使用し、無理のない範囲でトレーニングを行い、1か月からスポーツ復帰へと進めます。②縫合なら2~3週の松葉杖歩行で、1ヶ月でほぼ制限のない日常生活に戻ります。2~3か月目からは競技復帰に向けたアスレチックリハビリテーションを行い復帰をめざします。
手術法について
基本的に「半月板損傷=手術」ではありません。外来での注射、リハビリテーション、装具など保存療法で改善しない場合、症状の経過が長い場合、早期にスポーツ復帰を期待する場合、MRIでの断裂形態が悪い場合などに手術になることがあります。
断裂した半月板に対して、将来的な膝の軟骨損傷や変形を防ぐためにも、可能な限り半月板を残すように、①部分切除あるいは②縫合を行います。内視鏡を使って5mm程の穴を2~3ヶ所作成しながら手術を行いますが、たくさん縫合する場合は膝の横に2~3cm程の切開を加えます。
これは断裂した半月板を縫合した写真です。